セラピストなら一度は夢見るプライベートサロンの運営。
その夢を叶え、とっても素敵なホリスティックサロンを古都・鎌倉に開かれたオーナーセラピストの島田浩子さん。
つちがネットショップを運営していた時にお客様としてご利用いただいたのがご縁です。オープンの一報をいただき、取材をお願いしたところ快くお受けいただきました。
今回は開業インタビューとして、サロンオープンのきっかけけや準備で大変だったこと、これから開業する方へのアドバイスなどをお聞きしました。
インタビューはセラピストの島田さんと、サポート役でもある娘さんのお二人にお答えいただきました。サロンの詳細は別の記事にまとめます。
目次
これまでのご経験
まず島田さんのご経歴を簡単に。
2003年にトリートメントライセンスを取得。デイケア施設でリハビリ前後のトリートメントを長年にわたり担当され、その間にお台場のサロンでのリフレクソロジーも経験。
近年は大学病院で希少難病の患者さんの傾聴や産婦人科で産後のお母さんへのトリートメントもされてきたスペシャリストです。
鍼灸師から経絡(けいらく)についての指導を受けていらっしゃり、アロマトリートメントに経絡やリンパドレナージュを組み合わせたアプローチで心身のバランスを取り戻すケアが持ち味とのこと。
アロマテラピーにも精通、NARD JAPANをはじめ多くの協会資格を持ち、精油の作用についても造詣が大変深い。心身両方の面から多角的なアプローチができる有数のセラピストさんと感じています。
本当に優しく温かいお人柄、セラピストが天職であることがインタビューからも伝わってきました。
自宅サロン開業のきっかけ
ー いつ頃から自宅でサロンを開こうと思っていましたか
<島田さん> 今年(2021年)のはじめは産婦人科での産後ケアのお仕事を続けようと思っていましたが、コロナの影響でひとつは中止、もう一ヶ所は閉院となってしまいました。
たまたま古くからの友人と会った時に「病院のお仕事はどうなるかわからないから、自宅でやった方がいい!」と後押しをしてくれたのがきっかけです。
ー そんなことが。ご自身も開業への想いはありましたか
産婦人科で産後のお母さんにトリートメントをしていた時に「今後もどこかでやってもらえませんか」と言われることがよくありました。
それから、大学病院で難病の方のお話を聴く「傾聴」のお仕事をしていた時も「ちょっと触ってあげたら絶対楽になるのに!」という思いがすごくありました。傾聴の仕事では相手に触ることができないんです。
そういったことがあったので、自分で場所を持てば、疲れている方や辛い思いをされている方に元気を取り戻していただけるかなって。
自宅で開業すれば費用もそれほどかからないですし、喜んでいただければという想いではじめました。これまでの集大成として人がここに来てくださればという思いです。
ご病気、産後などでサロンに足を運べない方には訪問という形で、サロンと訪問、どちらもできればと思っています。
開業準備について
ー 開業にあたり大変だったことはありますか
後押しをしてくれた友人がコンサルもできる方で「一番最初にターゲットをどうするか決めなきゃいけないのよ」って言われて「ターゲット?え?」と(笑)
サイトも娘が全部ゼロから作ってくれて。そのコンサルの方にチェックをしてもらいながら。
一番大変なところを周囲の人に全部やってもらって助けてもらったという形です(笑)
ー (笑)備品などの用意はどうされましたか
施術ベッドも「処分したいんだけど、もらってくれない?」と人からいただきまして。開業の話が始まる前だったのですが「いらないなら粗大ゴミにする」と聞いて「そんなもったいない!」と引き取ったらたまたまサロンをオープンすることになりまして。
あと机は、何十年も前の家にあったものにカバーをさっとかけて。
こんな風にして家にあった物を掘り出して使っているので、初期費用としてはすごく抑えられたんじゃないかなと思っています。
あと経理のことも何もわからないので、青色申告のためにパソコンスクールに通いながら教えてもらっています(笑)
とにかく決めることについては全部娘が一緒にやってくれて、トリートメントの時間をどうするのかといった細かいことも全部後押しをしてくれました。
開業準備 webサイト編
ー すごく素敵な公式サイトです。娘さんはweb系のお仕事を?
<娘さん> 私の苦労話をあんまりしてもしょうがないのですが(笑)元は公務員だったのでまるっきり素人で。webサイトも何をやったらいいのか全く知らないところから始めたので、かなり時間がかかってしまいました。
ーええっ、てっきり業界関係の方だと思っていました…!
いえいえ、だらだら作ったので3ヶ月くらいかかってしまったんですけども(笑)
さっきお話に出たコンサルをされる方から初心者でも扱いやすいwebサイトの作成サービスがあるから調べてみるとよいのではと教えてもらって。
それで、いくつかサービスを比較して一番簡単そうな「ペライチ」を選びました。
ー掲載する写真はどうされましたか
<娘さん> 写真は私と私の夫が撮ったものです。私はスマホでの撮影なんですけども、夫が写真が趣味で一眼を持っていまして。枚数をとにかく掲載しよう、写真推しで作るというコンセプトで進めました。
ー プロのお写真と思っていました…!掲載内容はどのように決めたのですか
<娘さん> 先ほどのコンサルの方にも内容をチェックしてもらいながら、母に書いてもらった「たたき」をひたすら落とし込んで作成しました。
<島田さん> コンサルの友人からは公式サイトを作る前に、紙のチラシを作るようにとアドバイスをもらっていました。
その友人がお試しにと連れてきてくれたお客様がウェブデザインのプロの方で、娘が作った草案をご厚意で見てくださり、デザインや文章の入れ方といった具体的なアドバイスをいただきました。素人の娘にとってこのアドバイスは大変参考になりました。
さらにその方はお客様としてご友人を紹介してくださったりと、コンサルの友人同様、本当にサポートをしてくださいました。
完成した公式サイトはこちら
予約方法について
ー 予約はメールか電話とのことで、予約システムを導入されない理由は?
<娘さん> とにかく母が機械にとてつもなく弱いので。私は従業員ではなく何かあった時にサポートをする立場なので「ネット予約の対応がうまくできない」といったことが起きない体制にしています。
今の時代を考えるとお客さまに不便な思いをさせてしまうと思うんですけれども、トラブルが起きないことを優先しています。
ー なるほど。どういった方々をターゲットにされていますか
<娘さん> お客様の層としてはミドル世代を想定しています。例えば都会での生活や仕事に疲れを感じている方などです。
ネット予約は幅広い世代に浸透しているとは思いますが、メールでのやりとりにそれほど抵抗がなく、むしろ密接なやり取りの方が安心できるという方に来ていただけたらと思っています。
<島田さん> メールでのやりとりの時点で若い方は面倒を感じると思いますし、実際にここ(鎌倉)まで来れる方はそれほど多くないのではと思っています。
日常から離れて静かに気持ちをリフレッシュさせたい、ここでトリートメントを楽しみたいと思っている方に来ていただければ嬉しく思います。
つちより補足:一般的なweb代理店の予約システムの導入予定もないとのことです。できるかぎりランニングコストを抑えた運営をされています。(2021年11月現在)
講習について
ー HPに記載されている講習について教えてください
<島田さん> かねてより講習を提供するグループに所属していて、産後ケアの講習を経験しています。
プロの方を対象とした産後ケア講習会ではもともとの知識・経験にプラスアルファをしていただくための講習を行っていました。
あと、セラピストの経験がなくてもできる「産後の現場ですぐ使えるトリートメント」を教えてほしいというリクエストをナースさんからいただき開催したところ大変好評で「夜勤のときに入院患者さんにできました!」という喜びの声をいただきました。
講習は初心者の方からプロフェッショナルの方まで対応が可能です。アロマトリートメントに加えて鍼灸師の師匠から経絡(けいらく)についても学ばせてもらいました。
その他いろんな方面からのアプローチの仕方を勉強したので、既にプロとして活動している方でアロマトリートメントに何かをプラスしたいという方のお役に立てるかなと思っています。
ー プロの方への講習も可能なんですね
<島田さん> はい、例えば妊婦さんは経絡的には禁忌のツボがいくつもあるんですけれども、知らないで施術をしてしまうと危険が伴うことがあります。
普通のセラピストは「妊婦さんへの施術はこわい」と仰る方が多いんですけれども、知識があって「ここを触ってはいけない」と理解をしていれば妊婦さんへのアプローチがこわくなくなります。
ただ、サロンにはベッドが一台しかなく、一度に一人もしくは二人の方への対応になるのでそれでもよろしければという形にはなっております。
トリートメントの仕事は「これで終わり」ということはなく、どんどん勉強をして深めていかないと、さまざまなニーズや要望にお応えしていくことは難しいと思います。
私自身もまだまだ知らないことがありますので、自分も勉強をしていかなければと思っています。
オーナーとしての想い
ー トリートメント・訪問・講習と幅広いメニューがありますが、どこに一番想いがありますか
<島田さん>トリートメントで心身をゆるめてリフレッシュをしていただきたい。この庭でリラックスをしていただきたいというのが一番の想いです。
もちろん自分が長年やってきたことでお役に立てる場があれば産前産後の方をはじめ訪問でのサービスもと思っています。
今後について
ー いつまでサロンを続けたいですか
<島田さん> 街中の回転の早いサロンで働くにはすごく体力がいると思いますが、私のような働き方だとそこまで体力を使わないんです。それでも筋力を維持するためにストレッチなどを行っています。
おばあさんになった人にやってもらいたいかはわからないんですけれども(笑)お客様が望んでくださるのであれば、何歳まででも続けていけるのかなと今は思っています。
これから開業される方へ
ー これからサロンを開業される方へのアドバイスをお願いします
<島田さん> 開業することを決意する勇気はもちろん、こうしたい!と思ったことをブレずに進めていくことはなかなか大変だと思っています。
まず、自分もそうでしたがターゲットの設定はきちんと決めた方がいいと思います。コンサルの友人に「もっと細かく決めなきゃだめよ!」と言われました。
それから料金設定についてですが、個人的に訪問トリートメントをしていた時はすごく安い金額でやっていたんです。
それもコンサルの友人に「そんな安い金額でやっちゃだめよ。あとから値段を下げるのはいくらでもできるけど、上げることはできないからね。」と言われて。
「きちんと採算をとることを考えないと後々苦しくなるよ。」と。この友人のアドバイスにとても助けられました。
あと「ネットの予約サイトを仲介します」という営業の方がここまで来てくださったんですけれども「敢えてネット予約はしないようにしている」とお断りをしました。
開業にあたりお部屋や物件を借りる方は毎月の売上を確保しなければいけないと思います。そういった業者さんは幾つもあると思いますので、自分の経営方針や規模と紹介されたサービスが合致しているか、良く調べておくことは大切かなと思います。
スタートするにあたっては娘から「これはどうするの?」とひとつひとつ質問を受けました。あっ、こんなことも決めなくてはいけないんだなと。全体を通して、周りが手を差し伸べてくれたのでとても助かりました。
おひとりでスタートをしなければならない方は、開業にあたっては大きな山がたくさんあると思うのですが、そこを乗り越えてということになります。
あとは自分がどうしたら楽しんでできるかということですね。一人でも多くの方が自分の好きな仕事をしていただければなと思います。
インタビューを終えて
一流のセラピストとしてご活躍をされてきた島田さん。開業に関しては初心者からのスタート。
コンサルができるご友人と聡明な娘さん夫婦のサポートでここまでたどり着いたことがお話から伝わってきました。
開業にはできるだけ費用をかけず、素敵なお庭と(別記事にしますがお寺の一部だそうです…!)もともと家にあるものを活かしたサロンづくり。
webサイトは作成サービスを活用した娘さんのお手製、写真は娘さん夫婦からのボランティア。広告費用もかけずと、とことんシンプルな開業をされているのが印象的でした。
これまでのお客様を大切にしながら、新規の顧客はゆっくり開拓。来ていただいた方には鎌倉を楽しみつつ、お庭とトリートメントで寛ぎ、リフレッシュをしていただきたいというお気持ちにあふれていました。
今回のインタビューを通じて、島田さんのセラピストとしての矜持の素晴らしさはもちろん、分業の大切さを目の当たりに。
得手不得手は誰にでもあります。得意ではない部分は無理にやろうとせず、できる人に頼った方がうまくいくんだなと。そして人に恵まれているのは、これまでの島田さんの生き方そのものなんだと僭越ながら思いました。
これまでの集大成としての開業がたくさんの方の安らぎにつながることを願っています。
公式サイトはこちらから
リラクゼーションサロン渓
※この記事では開業にフォーカスを当てています。サロンの詳細はまた別の記事に。